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『恋はデジャヴ(グランドホッグデイ)』

2017/06/29
category - 未分類
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 子供のころ、寝る前に母親が本を読んでくれた。王子さまだの、お姫さまだの出てくるから、すっかり騙されていたが、後で気づいた。あれは、スコット卿の『アイヴァンホー』だ。ちょうど文庫の上巻が出たころ。自分が読みたかったから、読んでくれただけだったように思う。やにややこしくて、ノルマンだ、サクソンだ、十字軍だ、など、子供にわかるわけがない。おかげで、すぐに眠くなった。

 その後も騎士物語は大好きだ。アーサー王とその外伝はもちろん、ニーベルンゲンの歌、トリスタン物語、アマディス・ガウラまで、うそっぱちの話に心を躍らせた。そんな中、スコット卿の名前は、とてもなつかしい。

Lay of the Last Minstrel, Canto VI (My Native Land)

Breathes there the man, with soul so dead,
 Who never to himself hath said,
This is my own, my native land!
  息だけするは、魂の死んだ男、
   ここが自分の生まれた国などと、
   こいつはどこにも思ったことが無い。

Whose heart hath ne'er within him burn'd,
 As home his footsteps he hath turn'd
From wandering on a foreign strand!
  異国の海辺をさまよって、
  ようやく帰途についたとしても、
   彼の心は弾みもしない。

If such there breathe, go, mark him well;
For him no Minstrel raptures swell;
  こいつがまだ息をしていたら、行ってよく見ろ、
   吟遊詩の喜びさえ彼を楽しませないのを。

High though his titles, proud his name,
 Boundless his wealth as wish can claim;
 Despite those titles, power, and pelf,
 The wretch, concentred all in self,
  身分高く、名声広く、望みうる限りの富を得ても、
    こんな位、力、金に目もくれず、
    このろくでなしは自分のことしか考えられない。

Living, shall forfeit fair renown,
 And, doubly dying, shall go down
 To the vile dust, from whence he sprung,
 Unwept, unhonour'd, and unsung.
  生きながら、立派な名望も失い、
   二重に死んで、彼の出た卑しい塵へと墜ちるが、
   泣かれも、讃えられも、謡われもしない。



 同じものを見えれば、同じものが見えるわけではない。ニーチェがどうこうなどと言うのは、表面的。これは根は郷愁の話。自分のふるさとは自分で作る。自分から逃げてばかりいる者、スコット卿を知らない者が、この映画を見ても、結局、なにも見えるまい。東大の学生だったころはよかった。同じ世界を知っている友人たちがいたから。どうせいま、世間の人々と話が合わない。自分が合わせる気もないし、合わせない世間を恨む気もない。以来、ずっと「異邦人」の「異国」にいる、というだけのこと。

 しかし、少なくとも私は、ここが自分の生まれた国、というものはある。こうしてスコット卿の名を聞けば、いろいろ思い出すことも多い。文化的郷土を持たない連中は、この映画の皮肉を見ても、我がことは気付かないだろう。そして、がんばればいつか夢はかなうと思いました、というような、ディズニーの安っぽい受け売りを言って終わる。そして、毎日、その金ぴかモットーを唱えるだけで、人生のすべてを失う。伝える言葉も無いが、どうにもならない。
                                 
                                      

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