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オリンピックとヤン・チヒョルトのWaddem Choo NFのこと

2015/08/30
category - 未分類
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 いずれ騒ぎになって検索し、ここにたどり着く人もいるだろう。日本語で「チヒョルト」と表記されるが、ドイツ語としてはチッヒョルトと呼ぶ方が正しい。問題のWaddem Chooだが、「ワッデムチュー」と読む。意味がわからん、という人は、欧米人でも、ドイツ人さえでも多い。というのも、これ、狭いロンドン市内だけの下町方言だから。

  幼児語の歌『Three Little Fishies』(fishiesで正しい、魚の縮小名詞、さかなちゃん、という感じ)でも使われており、1939年に米国でけっこうなヒットになっている。が、もとはもっと古い。これは、言葉遊びで、「oop boop dit-tem dat-tem what-tem Chu!」(うーぷ、ぶーぷ、でぃってむ、だってむ、わってむ、ちゅー!)という表記の方が一般的か。これは、「おいおい、見ろよ、あれだよ、ありゃ何だ? ひゃぁ!」 という意味。ロンドン下町語のコックニーたちは、「上品」なthの歯摩擦音ができず、dないしtになってしまう。例の『マイフェアレディ』で、The rain in Spain stays mainly in the plainが、だ、らいん、いん、すぱいん、すたいず、まいんりぃ、いん、だ、ぷらいん、になってしまう、というやつ。

 で、話は戻って、チヒョルトのフォントだが、Waddem Chooは、「なんだこりゃ、ひゃぁ!」という、かなりふざけた通俗的ネーミング。当時のドイツの本は、威厳ある、というか、あえて一般人には絶対に読めないようにした、一般ローマ字体とはまったく異なるフラクトゥル(髭文字)を使っていた。それをモダニズムの気鋭デザイナー、チヒョルトは、誰でも見れば読める、なんだこりゃひゃぁフォント、に変えてしまった。ラテン語聖書をドイツ語に訳にしたルターにも匹敵する文化的革命だった。いままた、こういう場面で彼の名前が出てくるのは、とても感慨深い。

 このフォントのパーツに縦線のスペースが空けられているのは、これが当時のデザインや看板のステンシル(型抜き染め)を想定していたから。この形に穴があいた金属板ないしベニア板の上から枠をなぞれば、かんたんに複製できる。ペンキをぺろっと塗るだけで同じ文字が量産できる。大道具、小道具など、多くのものにマークを入れなければならないリエージュ劇場のロゴなどでも、このアイディアを踏襲している。まして、文字列の場合、文字間隔を正しく調整するために、スリットは縦の穴でなければならなかった。きちんと勉強していないやつは、理由がわからず、平気でパーツを密着させる。まあ、うちの父の時代の、くX暑いトレスコも知らないで、スキャンを「トレース」と言ってごまかすようなやつでは話にならない。(クロワッサンに網点が出ているぞ。網点までトレースしたとでも言うのか?)

ついでながら、Waddem Chooの後についているNFだが、これはNick's Fontのこと。ニック・カーチスという1948年生まれのじいさん、じつはこの業界ではものすごい。もともとテレビのフリップなんかを描いていたんだが、先見の明があって、1997年から、図書館や博物館で調べまくり、これまでの世界中の歴史的著名フォントの数々をデジタル・リデザインした。ステンシルだったり、鉛の活字だったりしたフォントがいまもなおデジタルで使えるのは彼のおかげ。しかし、いったい、この人、どれだけのデジタルフォントの「著作権」を持っているのやら。ただ、1つ10ドル、と意外に良心的。それでも、世界全体からすれば、とんでもない金額が転がり込んでいるのは確実。
                                 
                                      

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